竜介軍少佐のブログ

色々投稿しようと思ってるので時々見てね

竜介、クリスマスパーティーを開催する!

令和二年十二月二十五日金曜日。北海道某所。
この日も厳寒であるにも関わらず、竜介は熱くなっていた。
彼は、よせばいいのに自宅にて軍団員を集め、クリスマスパーティーを開こうとしていたのだ。勿論軍団員だけではない。非軍団員から敵対組織まで幅広く誘うつもりでいた。どうせパーティーをするなら人が大いに越したことはない。
竜介が先ず最初に誘ったのは、軍団員ではなく他ならぬひろみGOだった。彼のアルバイト先はピザ屋であり、パーティーにうってつけの料理であるピザを入手するのに不可欠の存在だ。…しかし。
「もしもし?竜介じゃ。ひろみよ、今日空いてるか?」
『ああ、今日はクリスマスだもんね』
「来てくれるな!盛り上げるどー!」
『ごめん、俺、うめ子がいるから…』
「ぶはははー!うめ子も一緒に来るが良い!竜介軍のパーティーは如何なるものか見せちゃる!」
『それが、うめ子が二人きりで過ごしたいって…』
「えっ」
『今日はダメなんだ、りゅーすけ…それじゃあね』
パーティー料理の要であるピザを失われてしまった竜介は、スマートフォンを耳に当てたまま暫くその場に佇む事しか出来なかった。
気を取り直し、軍団員に電話をかける。
先日訪れたルメは彼女とデートとの事でNG、さとこはどういう訳か連絡がつかず、ななしんは新たなる漫画制作に執心しており手が離せないのだとか。
「ええと、後は…そうだ。岡田と泰登はどうかな」
泰登は竜介軍ではないが、しかし若き新鋭の二人を招待するということは、次世代竜介軍についてパーティーの最中語る機会もあるか。ところが、意外な結果が待っていた。
「夜勤だよ…」
と、岡田。
「受験勉強の追い込みをしたいんだ、パーティーどころじゃないって」
と、泰登。
両名ともに断られてしまった竜介は、古参の伍長に連絡を試みる。それにしても、仮に伍長がパーティーにやって来るとして、自分と彼しかいないのではそれはもうパーティーとは呼べないではないか。缶ビールに適当なツマミを用意するだけのような、ただの家飲みに終わるのが既に確定していた。
「お前のくせぇ部屋に誰が行くか」
即答だった。尚、彼は独自にパーティーを催すらしく、後に聞いた話によれば、それはそれは絢爛たるものであったそうだ。

なんだよ、皆して。
竜介が、二十年前の、今の生活に堕ちる前を思い出す。
少年の頃も、成人してからも、ヴィジュアル系バンドをしていた時も、この部屋で恋人や仲間たちと、楽しくやって来た。
彼は過去の事を想起し現在との差に煢然たる思いを抱いて落胆するほど繊細ではないが、深々と雪降る窓の景色、暖房の効いたアンモニア臭漂う自室で表情を無くし、パンツ一丁で何をするでもなく佇む竜介を見れば、人によってはもしかすると彼が淋しいと感じているように思うかもしれない。
ガチャン。
母が帰宅する気配がした。
階下に下りてみると、母は防寒着の類を取るところだった。母がマフラーを取りながら言う。
「竜介、ピザ食べる?」
「うん」
「今日は誰も来ないの?珍しいのね」
そう言ってテーブルに二人分のチキンとピザ、そしてショートケーキを置く。
こうなる事はなんとなく予想をしていたけれど、今年も母と二人きりのクリスマスになりそうだ。そして、もう少し母を労い厭わなければならぬと思う竜介なのだった。
(即興)

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メリークリスマス!