私は負けた。完膚なきまでに惨敗した。
何にって?
以前話した太田という先輩風を吹かした人間からのパワーハラスメントに対してだ。
奴のパワーハラスメントは日に日にエスカレートし、私のみならず一緒に応援として強制的に派遣された中野までに及んだ。
中野はまだ良い方で、常に太田と一緒に働く私は格好の餌食だった。
太田は言った。
「お前なんていらない」と。
私はその時、『上等だよこのクソ野郎。貴様のところなんかでやっていられるか!』
と言いたかったが、それは出来なかった。何故なら、契約書の存在があるからだ。
私の部署は期間限定で閑職にある。人件費を抑え、可能な限り売り上げを出したい。その考えを慮ると、契約中の私に今は戻って欲しくないはずだから、簡単には“上等だ~”とは言えなかった。
私は黙っているしかなかった。そんな事が募りに募り、限界に達したのだ。断っておくが、退職をするという意味ではない。
……人生は続く。