竜介軍少佐のブログ

色々投稿しようと思ってるので時々見てね

竜介、ハロウィンを楽しむ!

令和二年十月三十一日土曜日。
この日、北海道某所は晴天だったが気温は低く、外套が手放せない一日だった。世の人々が仮装し街を歩く中、ここ竜介軍本部…即ち竜介の個人部屋には、以下の人物が集まっていた。
さとこ、そしてななしん。
竜介軍軍団長にして二等兵の竜介は、パンツ一丁でベッドの上に胡座をかき、腕を組んで考え事をしていた。彼はこの西洋から伝来するハロウィンというイベントをきっかけに、肉厚の軍団員増強計画を練っているのだ。
伍長と少佐は仕事で忙しいし、ルメは雲を掴むような人物で誘っても結局「パワプロをやる」と言ってこの場にやって来なかった。
少ない人員。だが、火急だというのに集まってくれた軍団員のこの二人は、竜介が最も信頼のおける者達だ。気づけば付き合いも長い気がする。
「さとこ、ななしん、よく来てくれた。他の来なかった奴らは後で仏罰を受けさせる」
今までにない険しい表情をした竜介が言う。一方、呼び出された二人はというと…
「いい?竜介。くだらない用事だったらあんたの、あの目つきの悪い過去写真を縦半分だけ晒すよ。シンメトリーみたいにして」
「ええっ、あのイケメン(っぽい)写真を?」
「そうだよ。ななしんもしてあげようか?」
「お、俺は遠慮しとくよ」
二人のやり取りを暫し黙って聞いていた竜介だが、突然二つの鋭い目を見開き、豁然として己自身が練った計画の正当性を悟るのである。
竜介が口を開く。
「さとこ!ななしん!」
また面倒な事に巻き込むのではないかといった表情で二人が竜介に注目するが、竜介は二人には全幅の信頼を寄せていた。だからなんの心配もする必要がなかったのだ。それ故に堂々と言うのである。
真のカリスマとは、人が自分についてきてくれると信じる事が出来る者だ。
「なんだよ」
「はいはい、なんですか」
「腹が減った!今からお菓子を貰いに行くぞ!トリックオアトリックというやつだ!ぶはははー!」
自分は仕事をしていないし預貯金も無い。だから食糧を分け与えてもらうのは正当である、というのが彼の考えだ。軍団員増強案はまたお流れになってしまった。
それを聞いてさとこが溜息をつき、
「それを言うならtrick or treatだろ、バカか」
…と、竜介の間違いを訂正する。だが竜介の提案に拒否をしないので、どうやら彼女は同行してくれるらしい。
「す、好きなコスプレをしていいんですか!?」
ななしんが興奮気味に言う。それに対し竜介は、警察に補導されないような内容ならOKと返答。結果、ななしんの邪なる変身願望は打ち砕かれた。
「竜介はどんなコスプレをするの」
さとこの問いに竜介は胸を張って言う。
これが俺のコスプレだと。つまりパンツ一丁が彼のコスプレだと。
「ちょ、ちょっと。それは不味いでしょ、竜介さん!」
ななしんの制止に耳を貸さず、竜介は意気揚々と表に出た。
嗚呼!外へ出るのにスロットをやりに行くのとはまた違った、この高揚感はいつぶりだろう。いっそ自室にあるペットボトルに詰まった琥珀色の液体を、パチ屋の前でぶちまけてやりたい。
そうだ、それもいい。
パンツ一丁だというのに、お菓子を貰いに行くというのに、竜介は気分が高揚して仕方がなかった。
(即興)